ゴーストと呼ばれた地味な令嬢は逆行して悪女となって派手に返り咲く〜クロエは振り子を二度揺らす〜
すると、そこにロバートがやって来た。
ダイニングルームの剣呑な雰囲気に「またか」と、渋面を作る。
「今度はどうしたのだ?」
父の言葉が合図かのようにコートニーはみるみる泣き顔になって、
「お父様ぁ~! お異母姉様があたしのことをいじめるの~っ!」
父親に抱き着いた。
「なにがあった、クロエ」と、ロバートはコートニーを黙殺して長女に問う。
「それが、コートニーが私のネックレスを……」
クロエが困惑気味に異母妹の胸元をちらりと見やると、父もその視線を追った。
そこには、ジェンナー公爵令息からの贈り物であるネックレスが着けてあったのだ。
「こら、コートニー。それはクロエのものじゃないか」
「だってぇ~。あたしのほうが似合うんだもん!」
「だからって、姉のものを勝手に――」
「分かったわ。そんなに欲しかったら、それはコートニーにあげるわ」
クロエの凛とした声が響く。父は目を見張って、母娘は勝ったとばかりにニヤリと笑った。
「いっ……いいのか?」とロバート。
「えぇ」
「公爵令息からのプレゼントなんじゃないか」
「そうですが、コートニーが欲しがっているので」
「だが――」