ゴーストと呼ばれた地味な令嬢は逆行して悪女となって派手に返り咲く〜クロエは振り子を二度揺らす〜

「それはさせんっ!」

 にわかにロバートが声を荒げる。
 思わず発した自身の大声に少し戸惑ったあと、静かに言った。

「……コートニー、欲しいものがあれば私がなんでも買ってやる。だから、その乞食みたいな真似はやめなさい。クリスもだ」

「なっ……!」

「乞食ですって!?」

 母娘は矢庭に気色ばんだ。


(なんてことなの……!)

 クリスは打ち震えた。継子を睨め付けながら、ぎりぎりと歯噛みする。

 なんなのだ、この状況は。この生意気な小娘を困らせようと思ったら、いつの間にか心優しい聖人と、卑しい乞食のような構図になってしまった。格下の使用人まで嘲るような視線を刺してくる。

 ……こんなの、耐えられない。
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