ゴーストと呼ばれた地味な令嬢は逆行して悪女となって派手に返り咲く〜クロエは振り子を二度揺らす〜
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翌日、クロエは聖女の務めのあとに令嬢たちのお茶会へと赴いた。
逆行前は社交界に出させてもらえなくて孤立状態だったので、今回は外にも味方を作っておこうと、頻繁にお茶会に顔を出していたのだ。
あとは、聖女だとちやほやされるのも嬉しかった。
他人から注目されるということは、彼女に大きな快感を与えていたのだった。
「あら? クロエ様、今日のネックレスはいつもの違うのね。一体どうしたの?」
人一倍お洒落好きな伯爵令嬢が、驚いてクロエに問いかける。
(かかった……!)
クロエは、今日は普段より少し胸元が開いたドレスを着ていた。いつもと違うネックレスに気付いてもらうためだ。
彼女は、逆行前はスコットからもらったネックレスをとても大事にしていた。基本的には大切にしまい、特別な日にした着けていなかった。
しかし、今回は「愛する婚約者からもらった一番大切なものなの」と喧伝しながら、毎日このネックレスを着用していたのだ。
それが今日に限って着けていないとなると、令嬢たちの動揺は大きかった。
まさか、公爵令息となにかあったのだろうか。侯爵令嬢は大丈夫なの? ……などと、彼女たちは心配そうにクロエを見る。