ゴーストと呼ばれた地味な令嬢は逆行して悪女となって派手に返り咲く〜クロエは振り子を二度揺らす〜
クロエは、今日も婚約者からのプレゼントではないネックレスを身に着けていた。
彼は会うたびに彼女がいつも自分の贈ったネックレスを着けているのを見ていたので、今日は婚約者の姿を認めた途端に、その変化に気付いたのだった。
「知っていたの……?」と、彼女は目を見張る。
「聞いたよ。異母妹にあげちゃったんだって?」
「あ……」彼女は顔を伏せた。「その、ごめんなさい…………」
二人とも黙り込んで、少しのあいだ静かな沈黙が流れた。
ややあって、スコットはそっと両手をクロエの頬に当てて、優しく持ち上げ、じっと瞳を覗き込んだ。
「クロエらしいね」と、彼はにこりと微笑む。
「えっ……?」
「本当に、君は優しすぎる」
「ごめんなさい……私、スコットからいただいた大切な宝物を……。でも、あまりにも異母妹が不憫で、居ても立っても居られなくて……」と、彼女は一筋の涙を流した。