ゴーストと呼ばれた地味な令嬢は逆行して悪女となって派手に返り咲く〜クロエは振り子を二度揺らす〜
「おや?」
そのとき、スコットがふと顔を上げて遠くのほうへ目を向けた。
クロエも彼に倣うと、そこにはコートニーが柱の陰でもじもじしながらこちらを覗き込んでいる。
「彼女は……もしかして?」
「……そうよ。あの子が私の新しい異母妹。――コートニー、良ければこちらにいらっしゃい」
(そろそろ来る頃だろうと思っていたわ)
クロエは心の中でやれやれとため息をつきながらも、そんなことおくびにも出さずにコートニーを呼ぶ。
異母妹はてとてとと、貴族令嬢らしからぬ小動物のような可愛らしい足取りで近寄って来た。
「スコット、こちらが新しい家族のコートニーよ。コートニー、こちらは私の婚約者のスコット・ジェンナー公爵令息様」
「初めまして、コートニー嬢。僕は君の義兄になるスコットだ。これからよろしくね」
「はっ、初めまして、こんにちはっ! あたしはコートニーですっ!」と、彼女はまたぞろ貴族令嬢らしくない様子でぺこりと頭を下げた。
スコットはその姿に一瞬だけ目を見張ったが、
「ははっ、元気な可愛らしい異母妹だね」と、にっこりと微笑んだ。
(この子がクロエのネックレスを……。たしかに、平民育ちだと仕方がないか)
コートニーは恥ずかしいのか、頬を赤らめて異母姉の後ろにさっと隠れる。その愛くるしい姿は、どこか庇護欲を掻き立てられて、クロエが異母妹を守りたくなる気持ちも理解できた。