ゴーストと呼ばれた地味な令嬢は逆行して悪女となって派手に返り咲く〜クロエは振り子を二度揺らす〜
「おや、そのネックレスは……」
そのとき、スコットはコートニーの胸元に飾ってあるリボン型のネックレスに自然と目がいった。
それは、たしかに彼が婚約者の誕生日に贈ったネックレスだったのだ。異母姉から奪っておいて、よくも平然とその贈り主の前で着けていられるな……と、妙に感心した。
「これですかぁ~?」コートニーの馬鹿みたいに明るい大声が響く。「これはぁ~、お異母姉様からいただいたの! コートニーに似合うから是非に、って! 可愛いでしょ?」
盗っ人コートニーのあまりに堂々とした振る舞いに、スコットは一瞬だけ目を丸くするが、クロエが目配せをして彼も察して頷いた。
「……そうか。それは良かったね」と、スコットは微笑んだ。
(平民はろくに教育も受けられないと聞く。この子も、物事の善悪がまだ分からないのだろう。可哀想に……)
彼は不憫な気持ちで哀しそうな視線をコートニーに向けた。ちらりとクロエを見ると、彼女も胸を痛めているようなうら悲しい表情をしていた。
「ねぇ! 似合うでしょう!?」
コートニーは、そんな二人の心情なんてつゆ知らず、異母姉から婚約者を奪ってやろうと、彼にぐいぐいと近寄った。卒然と腕を絡めて、胸を押し付ける。