ゴーストと呼ばれた地味な令嬢は逆行して悪女となって派手に返り咲く〜クロエは振り子を二度揺らす〜
二人の熱い抱擁をまざまざと眼前にしたクリスとコートニーは、腸が煮えくり返りそうだった。
またしても、クロエにやられてしまった。彼女はどんなに貶めようと攻撃を仕掛けても、かわすどころか逆に攻めて来る。なんて嫌な女なのだろう。
でも……このまま黙って引き下がれない。
「そうだわっ!」
クリスはさり気なくスコットをクロエから引き剥がして、とんと椅子に座らせた。
「ねぇ、スコット様。実はコートニーにはまだ婚約者がいないの。どなたか、素敵な殿方はいらっしゃらないかしら? ――あなたみたいな?」
「えっと……、そうですね……」
人の好い彼は、彼女の言葉を素直に受け入れて、誰か適当な人物はいないか考え込んだ。
(なんて切り替えの早さなの。潰しても潰しても復活してくるなんて、まるで雑草ね)
クロエは継母の素早い変わり身にちょっと感心した。
きっと彼女が平民から侯爵夫人まで上り詰めたのは、この当意即妙な身のこなしなのだろう。
全く、油断ならない女。
だが……それを上手く利用できそうだ。