ゴーストと呼ばれた地味な令嬢は逆行して悪女となって派手に返り咲く〜クロエは振り子を二度揺らす〜
「そうだわ、スコット。来月、王太子殿下の婚約者の公爵令嬢様が主催する、若い令息と令嬢向けのお茶会があるでしょう? それにコートニーも連れて行きましょう。きっと、良い出会いがあるかもしれないわ」
「そうだね……! 公爵令嬢の婚姻直前だから、王太子妃になる前の最後にかなり大規模に開催すると聞いたな。きっと婚約者の決まっていない令息も多く参加するだろう」
「ねっ、コートニーはどうかしら?」
「お茶会……行きたい!」
「あら、いいじゃない。きっと可愛いコートニーなら殿方に引く手あまたなはずよ。地味な異母姉と違って」
母娘は掌を返したように、すんなりとクロエの提案を受け入れた。
(この女もたまには役に立つじゃない)
(この女の人脈は利用できるわね)
……と、それぞれ腹に黒いものを抱えながら。
こうして、三人でお茶会へ行くことが決まった。
コートニーは目ぼしい男を探しに。
スコットは、これを機に己とクロエの深い愛情で結ばれた関係を示して、他の令息たちに縁談を諦めさせるようにしようと思っていた。
そしてクロエは、婚約者と異母妹の浮気現場でも作れないかと、ぼんやりと考えていたのだった。