ゴーストと呼ばれた地味な令嬢は逆行して悪女となって派手に返り咲く〜クロエは振り子を二度揺らす〜
(クロエ……。すっかり変わってしまったね……)
彼の胸がずきりと痛んだ。
たしかに、婚約者の今日のドレス姿は目を奪われるほどに素敵だ。文句の付けようのないくらいに似合っているし、とても美しい。
しかし、真に彼女に似合うのは、陽だまりに咲くマーガレットのような、清楚で控えめな可愛らしさだ。
なぜ、そんな素敵な魅力を、無理にかなぐり捨てるような真似をするのだろうか。
彼は戸惑っていた。
彼女が高熱から目覚めてから、あまりにも変化し過ぎている。それは母の死が彼女を強くさせたのか、はたまた母の死で心が壊れてしまったのか……。
彼には分からない。
でも、彼女の心の奥底が悲鳴を上げているのを、ひしひしと感じる。
彼女は無理をしている。だから、婚約者である自分が彼女を救いたい。手を差し伸べられるのは、自分だけだと信じている。
でも……いつの間にか、二人の間には大きな壁が立ちはだかっていて、それを崩すことも乗り越えることも、非常に困難なのだろうと、感じていた。
(ちょっと……寂しいな…………)
漠然とした寂寥感は、彼の胸を締め付けるように、じわじわと侵食していった。
そんなスコットの苦悩する姿を、コートニーは隣で冷静に観察するように、じっと見ていたのだった。