ゴーストと呼ばれた地味な令嬢は逆行して悪女となって派手に返り咲く〜クロエは振り子を二度揺らす〜
(どうしましょう……。このままではスコットに誤解を与えたままだわ……)
クロエは焦った。
あのあと、婚約者にはすぐに手紙を書いた。ネックレスがどういう経緯で異母妹のもとに渡ったのか事細かに記した手紙だ。
だが……スコットから返事は来なかった。
待っても、待っても、便りは来ない。
ジェンナー公爵家へ足を運ぼうとしても、あのときの彼の冷たい双眸が脳裏に焼き付いて、彼と会う勇気が出なかった。
(スコットに拒絶されるのが怖い……)
クロエは入口も出口も塞がれた真っ暗なトンネルの中を彷徨っているような気分だった。それは酷く心細くて、底知れぬ恐怖心が身体中を支配していた。
話の通じない継母と異母妹が未知の生物のように思えた。
彼女たちと顔を合わせるのが怖くて、自然と外出が減って一日中部屋に閉じ籠もる日も多くなっていった。