ゴーストと呼ばれた地味な令嬢は逆行して悪女となって派手に返り咲く〜クロエは振り子を二度揺らす〜
(皆が私を見ている……。なんて最高なのかしら!)
そしてクロエは、幾多に重なる視線に興奮して、法悦の笑みを浮かべていた。
見られている。自分の姿、存在が注目されている。なんて素晴らしいことなのだろう。
ここでは、自分の名前を知らない者なんていない。それは、とても贅沢で素晴らしいことだ。
見られるって、本当に快感。
今日のために新しいドレスを用意して良かった。
きっとスコットの準備したドレスを着ていたら、地味過ぎて華やかな場に埋もれるところだった。
自分には、そんなしみったれたドレスなんて必要ない。
ここでも、三人の感情は一方通行で、決して交差することはなかったのだった。