ゴーストと呼ばれた地味な令嬢は逆行して悪女となって派手に返り咲く〜クロエは振り子を二度揺らす〜
◆◆◆
主催者の公爵令嬢とパートナーの王太子に挨拶を終えて、会場内を回ろうとすると、途端にクロエの周りに人だかりができた。
「クロエ様、ご機嫌よう」
「今日のドレスは星空の妖精のようですわね」
「あちらで一緒にお話しませんか?」
「今度、僕の家門の主催する夜会へ是非いらしてください」
あっという間にクロエの周囲に人の壁ができて、彼女はご満悦。
スコットは令息たちの動きを阻止しようと、護衛騎士のように殺気を発しながら、婚約者にぴたりとくっついていたのだった。
そして、一人ぽつねんと取り残されるコートニー。
(つまんないっ!)
彼女はふくれっ面で異母姉の周りの人の群れを眺める。
面白くない。なぜ、あんな女が人気なのだ。自分のほうが可愛いし華やかだし、うんと魅力的だし。
全く、貴族たちは人を見る目がない。
いつか、あの女の化けの皮を剥がして、地獄へ突き落としてやるんだから。
(……イイ男を探しに行こっと)
今日の目的はまずはイイ男、次にイイ男、叶わなかったらスコット様。お母様から教わった手管手練で、たくさんの殿方を魅了してやるのだ。