ゴーストと呼ばれた地味な令嬢は逆行して悪女となって派手に返り咲く〜クロエは振り子を二度揺らす〜
クロエは頬に涙を伝わせながら悲しげな視線を異母妹へ注いで、
「お互いに、誤解があったみたいね」
そっとコートニーを抱きしめた。
さり気なく、顎で彼女の頭を押さえつつ華奢な背中もかっちりと固めて、これ以上余計なことを言わせないように強く掻き抱く。
「私たち、二人とも互いに相手を気遣って、大切なものが見えていなかったみたい。あなたの言う通りに、私も異母妹と仲良くなりたかったの。でも、初めてのことだから、なかなか適切な距離が掴めなくて、こんな擦れ違いになってしまって……」
またぞろ、真珠のような美しい涙を流す。
途端に周囲のクロエへの批判的な感情も収まった。
「そうか、互いを想うあまりに擦れ違っただけなんだな」
「たしかに聖女が意地悪なんてするはずがない」
「クロエ様はなんてお優しいのかしら」
「妹のほうも意外に良い子じゃないか」
クロエが耳を澄ますと、場内の囁き声が肯定ばかりに変化していくのが分かった。ほっと胸を撫で下ろす。
これで、なんとか自分への批判を封じることができた。
あとは……不本意だが、公衆の面前で姉妹の和解の様子を見せ付けるだけだ。