ゴーストと呼ばれた地味な令嬢は逆行して悪女となって派手に返り咲く〜クロエは振り子を二度揺らす〜
「待たせたわね。――コートニー、大丈夫?」
涙でぐしゃぐしゃの酷い顔になってしまった異母妹を、このままお茶会へ参加させるのは不味いと、クロエは庭のベンチへ連れて行った。ちょうど木陰に隠れて、人目に付きにくい場所だ。
コートニーの様子が落ち着くまでスコットに見てもらって、その間に彼女が家の代表として公爵令嬢へ謝罪へ赴いていたのだ。
「……っく……ひっく…………あ、あたしは、大丈夫ですぅっ……!」
コートニーはまたぞろ泣き出していた。
「君がいなくなってから、ずっとこの調子でね」と、スコットは肩をすくめる。
「まぁ……」
クロエは呆れたように軽いため息をついた。
すると、コートニーはまた声を上げて泣き出す。
「おっ、お異母姉様……ごめんなさいっ……あたしが悪いんですぅぅぅ……」
(はいはい、演技ね)
クロエはすぐに見破った。
大規模なお茶会でしくじって、今は少しは持ち直したものの、令息たちもコートニーのことを遠巻きに眺めている。
今日は様子見といったところだろうか。
だから、標的をスコットに変更して、少しでもしおらしい姿を彼に見せたいのだろう。
……効果は薄いようだが。
しかし、ずっとこんな調子では困る。
コートニーは曲がりなりにもパリステラ家の令嬢。異母妹の失敗は異母姉の評判にまで関わるのだ。