ゴーストと呼ばれた地味な令嬢は逆行して悪女となって派手に返り咲く〜クロエは振り子を二度揺らす〜
遠い。クロエが遠すぎる。
なんだか、彼女との距離がどんどん開いていく気がした。このままもっと離れて、いずれ彼女が見えなくなってしまうのではないかと、急激に不安の波が彼を襲う。
昔は……こんな子じゃなかった。
たしかに真面目で責任感の強いところは変わっていないが、もっと控えめで温かさがあった。それに、よく自分に頼ってきて……。
「良い、コートニー? あなたはもう平民ではないのよ。れっきとしたパリステラ家の一員です。自身の浅はかな行動があなたのお母様やお父様、そして家門の名誉までも傷付けることを、ゆめゆめ忘れないように」
「はい、お異母姉様……」
コートニーは頷くが、心の中は腸が煮えくり返っていた。別邸にいた頃は、ロバートに溺愛されて甘やかされまくっていたので、怒られることの耐性がないのだ。
(なんなの、この偉そうな女は。あたしに指図するなんて、本当にむかつく……!)
クロエは、逆行前の経験から、そんな異母妹の心の声も手に取るように分かっていた。
これからも油断せずに、この母娘をもっと締め付けなければ。