ゴーストと呼ばれた地味な令嬢は逆行して悪女となって派手に返り咲く〜クロエは振り子を二度揺らす〜
「ちょっと暑いわね。なにか冷たい飲み物を持って来るわ。コートニー、今日は疲れたでしょう? 落ち着いたら、もう帰りましょう」
クロエは、さっきとは打って変わって笑顔を異母妹に向ける。そして有無を言わせずに飲み物を取りに行った。
またぞろスコットとコートニーが取り残される。
(さっき、クロエはなにかを喋った。一体なにを……?)
スコットの胸は、更に焦燥感で押し潰されるようだった。自分が彼女につい言ってしまった言葉に、彼女は激怒した様子だ。
婚約者は、なぜ怒ったのだろうか。彼には、皆目見当がつかなかった。
願わくば、昔のような純粋で優しいクロエに戻って欲しい。そのためにも、自分が彼女を支えなかれば……でも、どうやって?