ゴーストと呼ばれた地味な令嬢は逆行して悪女となって派手に返り咲く〜クロエは振り子を二度揺らす〜
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メイドは、音を立てずにマリアンの自室から去った。きょろきょろと辺りを見回して、足早に逃げる。
その怪しい様子をクロエは廊下の角からこっそりと見ていた。周囲に人影がないのを確認して、彼女はマリアンの部屋へと入る。そして、ゆっくりと机の引き出しを開けた。
すると、そこにはクロエの所有する高価なガラスペンが入っていたのだ。
(やっぱり。今回も私の周囲から崩すつもりなのね、お継母様は)
侍女であり乳母でもあったマリアンは、逆行前はクロエの唯一の味方だった。彼女が文字通り最後の砦だったのだ。
クリスはその防波堤を排除することによって、完全に継子を掌握した。
それからのクロエの日々は、地獄のようで、あれよあれよという間に「ゴースト」に成り果てていた。
クリスは、今回もマリアンに冤罪を被せて、屋敷から追い出すつもりのようだ。それも、前と同じやり方で。
クロエは今回は前回の二の舞いにならないように、家令に命令して、クリスが別邸から連れてきた使用人たちを秘密裏に徹底的に監視させていた。
数日前、なにやら怪しい動きがあると報告を受けたクロエは、注意深く彼らを観察していたのだ。
(今度こそマリアンは私が守るわ……!)
クロエはガラスペンを懐にしまって、踵を返す。