ゴーストと呼ばれた地味な令嬢は逆行して悪女となって派手に返り咲く〜クロエは振り子を二度揺らす〜
「お嬢様! ありました! それも、かなりの量です!」
そのとき、執事の一人が息せき切って部屋までやって来た。クリスもメイドも訳が分からずに、ただ目を丸くする。
「あら、やっぱりそうなのね。残念だわ」クロエは継母のほうを向いて「お継母様、先程そこのメイドがあなたの宝飾類を窃盗しているという情報が入ったのです」
「なっ……なんですって!? 本当なの!?」
クリスは問い質すように、きつい視線を執事に送る。
「は、はい! 今、数人でこの者の私室を確認したところ、奥様の指輪やネックレスが――」
「お前はっ! なんてことをしてくれたのっ!!」
「ち、違います! お待ち下さいっ、奥様っ!!」
次の瞬間、クリスの渾身の平手打ちがメイドの頬に炸裂した。