ゴーストと呼ばれた地味な令嬢は逆行して悪女となって派手に返り咲く〜クロエは振り子を二度揺らす〜
その後、メイドは解雇。紹介状は書かないが、温情で騎士には突き出さないことになった。
パリステラ家としても、この醜聞を外部に漏らすのは憚られたからだ。
クロエはここぞとばかりに「別邸から来た者は、もともとパリステラ家の審査に合格して本邸に仕えているわけではありません。この機会に皆、よそで働いてもらっては?」と、父親に助言をして、今回の事態を重く見た彼は了承した。
クロエは、これを機に、継母の息のかかった使用人たちを全て排除したのだ。
彼女は時間を止めてクリスの部屋に忍び込み、盗んだ宝飾類をメイドの部屋に置いただけだ。
時を司る魔法とはなんと便利なものだろうか。笑いが止まらなかった。
これで、継母の息のかかった使用人たちは完全に除外された。
クリスはますます動きづらくなって、悶々とした日々を過ごし、まだ魔法が発動できない実の娘に当たることも多くなった。
それも、これも、全部が魔法のせいだ。
追い詰められたクリスは、この負の連鎖をなんとか断ち切りたくて、禁忌とされている闇魔法の集会に極秘で参加するようになった。
彼女の目的は、「クロエから魔力を奪うこと」あるいは「クロエの魔力をコートニーに移すこと」だった。
その歪んだ願いのために、怪しい交際を始めて、己に割り当てられた予算も多く費やすようになったのだった。