ゴーストと呼ばれた地味な令嬢は逆行して悪女となって派手に返り咲く〜クロエは振り子を二度揺らす〜
そんな思いが頭の中をぐるぐる巡って、しばらく考え込んでいたが、ずっとこうしてはいられないと、意を決して図書館の中に足を踏み入れる。
(ここは変わらないわね)
図書館の中は厳かで、静寂を保っていた。時おりパラパラとページをめくる音だけが聞こえるだけで、人々は熱心に書物と対話をしている。
(懐かしい……)
ぐるりと、部屋全体を見回す。もう、どこになんの本があるか、すっかり覚えてしまった。
あの頃は、柱の陰になっている奥のほうの席にいつも座っていた。あのガリガリに痩せ細った貧相な身体を見られるのが恥ずかしかったから。隠れるように読書をしていたっけ。
その席からかろうじて見えるユリウスは、いつも姿勢が正しくて堂々としていて、真剣に学問に取り組む様子は、思わず見惚れてしまうものがあった。
そう、彼はいつも中央の席に――……、