ゴーストと呼ばれた地味な令嬢は逆行して悪女となって派手に返り咲く〜クロエは振り子を二度揺らす〜
「っ……!」
クロエは、彼の話を聞いてたちまち頬を赤く染めた。
(そんな……私のために毎日スコーンを……!)
彼の純真な優しさが嬉しかったのだ。彼は逆行前も自分のことを気にかけてくれていて、ゴーストだって揶揄される容姿にも決して馬鹿にしてこなくて。
そして、今の時間でも、ずっと自分のことを待っていてくれた。
なんて尊いことだろう。
「ば、馬鹿みたいだろう……? 愚か者を遠慮せずに笑ってくれ!」
ユリウスは肩をすくめながら自嘲気味に言って、頭を掻いた。
彼は半ば自棄になっていた。こんなの、自分がクロエのことを好きだって告白しているのも同然じゃないか。
「ねぇ、ユリウス」
クロエはまっすぐに彼を見て、嬉しそうに微笑んだ。
刹那、彼の心臓がトクリと跳ねる。
「ありがとう、私のために待っていてくれて……凄く、嬉しいわ」
「そっ……」彼の顔が熱くなった。「そうか……。それは、良かった」
「えぇ!」
彼女の目が更に細まる。
彼も吊られてふっと微笑んだ。本当に彼女と再会できたのだと実感すると、感激して胸がいっぱいになった。