ゴーストと呼ばれた地味な令嬢は逆行して悪女となって派手に返り咲く〜クロエは振り子を二度揺らす〜
「――それで、ユリウスは前の記憶があるの?」
美味しいスコーンを食べ終わって、クロエは一番聞きたかったことを尋ねた。
ユリウスは深く頷いて、
「あぁ。君が時間を巻き戻したようだな」
「えっ? 私が!?」
クロエは目を丸くする。過去に逆行したのは、なんらかの超常的な力……それこそ、神様のような……が発動して、自分はその流れに上手く乗っただけだと考えていた。
(でも、私自身が巻き戻したの……?)
考えても分からない。たしかに自分は時間を操る魔法を使えるようになったが、まさか自ら過去に遡っただなんて。
己の魔法を研究している最中は、いくら試してもそんなことできなかったのに。本当に?
「その様子だと母君からなにも聞かされていないみたいだな」ユリウスはじっとクロエの瞳を見つめる。「これから、俺が知っていることを話すよ。……君の、その瞳のことも」