ゴーストと呼ばれた地味な令嬢は逆行して悪女となって派手に返り咲く〜クロエは振り子を二度揺らす〜
「覚えていてくれて嬉しいよ」ユリウスはふっと微笑んだ。「君の言う通り、俺は逆行する前は左側の瞳の色が若干異なっていた」
「夜空みたいに輝いていたわ」
彼は頷く。
「俺の母は古の一族――アストラ家の末裔だ。……そして、君の母君も」
「お母様が……?」
クロエは目をぱちくりさせる。そんな話、初耳だ。
たしかに母は極めて魔力の強い家系だとは言っていたが……アストラ家? 全く知らない。分からない。
「アストラ家の伝説を知っている者は、今ではほとんどいない。古来より彼らは自らの存在を秘匿とし、その魔法は一族間だけで伝えられていた。彼らは力を失わない為に近親婚を繰り返し……皮肉にもそれが元凶で、やがて滅んだ。――と、言われているが、実は生き残りがいて、俺も君もその血を受け継いだんだ」
「…………」
クロエは黙り込む。話が大き過ぎて、正直ついていけない。
ユリウスは、そんな彼女に考える時間を与えるように少しのあいだ沈黙を保っていた。
ややあって、彼女が続きを促すように彼を見ると、再び口を開く。