ゴーストと呼ばれた地味な令嬢は逆行して悪女となって派手に返り咲く〜クロエは振り子を二度揺らす〜
「アストラ家の特徴として、この目だ。一族は生まれたら必ず左側の瞳が光を帯びる」
「えっ……!」彼女は思わず声を上げる。「で、でも、お母様は……。それに、今の、あなたも……?」
母は、左ではなく右目が輝いていた。その記憶は確かだ、決して忘れるはずがない。逆行前に図書館で彼とその話をしたのも記憶に新しい。
それに、今の彼も右目が煌めいている。特徴的なそれを間違えるはずがない。
「ああ、この目は時間を測る指標みたいなものなんだよ」ユリウスはこともなげに答える。「一族の血を受け継いだ者は、産まれたての頃は必ず左目が光に覆われる。しかし、時を遡って再び同じ時間を繰り返す際に、それが右目に変わるんだ。コンパスと同じだな。己がどの時間軸に存在しているか分かるように、時の迷路の中で迷わないように」
「そっ……そんなことって……」
急に寒気が襲ってきて、クロエはぶるりと身震いした。
さっきから非現実的な話ばかりで、目が回りそうだ。