ゴーストと呼ばれた地味な令嬢は逆行して悪女となって派手に返り咲く〜クロエは振り子を二度揺らす〜

55 複雑な「想い」です!

「理由……」

 クロエはぽつりと呟くが、そのあとは言葉が続かなくて黙り込んでしまった。
 さっきユリウスは「想いの強さ」だと言っていた。それが逆行の魔法の鍵になる、と……。

 自分が過去に遡った理由はなんだったのだろうか。やっぱり心残りがあったから?

 胸の中に抱えていたのは、悔しさと悲しさと……憤りだった。
 父親、継母、異母妹、そして婚約者。彼らに対する恨み辛み。絶望。
 だから、自分がこの世界から消えてしまうことで、全てを終わらせたかったのだ。

 それなのに、戻って来た。


「……逆行前に」ユリウスが囁くように言う。「悪いが、君のことは調べさせてもらった。その……その件と関係があるのだろう、か…………」

 クロエは目を見張る。瞬時に全身が凍り付いた。
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