ゴーストと呼ばれた地味な令嬢は逆行して悪女となって派手に返り咲く〜クロエは振り子を二度揺らす〜
「本当は、もっと早く行動するつもりだったんだ。でも、俺には……立場とか、雁字搦めになっていることが多くあって、それで躊躇して……。俺がもっと早く動けば、あんなことには……ならなかったかもしれないのに……っ…………!」
ユリウスは唇を噛む。握りしめた拳が微かに震えていた。
彼は己を恥じていた。
帝国の第三皇子という身分に縛られて、速やかに行動を起こすことができなかったからだ。仕来りや慣例などに囚われて足踏みしているうちに、愛する女性を不幸にしてしまった。
皇帝である父にお伺いを立てずに、あのまま彼女を掻っ攫って来れば良かったのに。彼女の身分からして、事後承諾でも問題なかったのだ。
あの頃の愚鈍な自分が、酷く腹立たしかった。
行動を起こさない「想い」は意味がない。