ゴーストと呼ばれた地味な令嬢は逆行して悪女となって派手に返り咲く〜クロエは振り子を二度揺らす〜
正直、母への想いは複雑だ。
逆行してから、あまり考えないようにしていた。考えたくなかったのだ。
今は、「大好き」だった気持ちの中に「なぜ」「うそつき」……そんな黒い感情も入り混じっている。
(それでも、私はお母様のことを――……)
でも、継母たちが母の名誉を汚したことだけは、絶対に許さない。
だから、その汚名を回復させるために、侮辱したことを償ってもらうために……今、こうやって動いているのだ。
ユリウスと目が合う。にわかに不安が襲って来て、鼓動が早くなった。
彼は、復讐に生きる自分のことを軽蔑するだろうか。
今の自分は、我ながらなんとまぁ醜い姿だとは思う。時間の魔法を悪用して、継母や異母妹や婚約者を貶めて。最低だと、分かっている。
清廉潔白な彼は、きっと……嫌う。
「クロ――」
「最悪だと、思っているんでしょう?」
思わず先に言葉が出た。彼から否定される前に、自らの口から毒を吐きたかったのだ。
だって、彼の拒絶が怖かったから。
一拍して、
「別に、いいんじゃないか」
ユリウスはいたずらっぽく笑った。