ゴーストと呼ばれた地味な令嬢は逆行して悪女となって派手に返り咲く〜クロエは振り子を二度揺らす〜
ユリウスは微苦笑する。本当は「復讐なんて止めておけ」と言いたいところだった。
きっと復讐が成功しても、彼女の心はもっと傷付く。本来の彼女は、とても優しい子だから。
だから、本心では「そんな物騒なことは忘れて自分と帝国で幸せに暮らそう」と、伝えたい。
でも、仮にそのような状況になっても、彼女の心は一生晴れないままなのが明白だ。
だから彼は、復讐が終わったあとの彼女の生きる道を隣で支えようと決めたのだ。
彼女はまだ若い。自滅しない限り、復讐の後も人生は続く。
そのときに、後戻りができないくらいに全てが壊れていたら、元も子もないのだ。
家族に復讐をするということは、自身の家門に傷を付けることに等しい。おそらく家門の信頼も評判も急下降するだろうし、下手をすればパリステラ家自体が取り潰される可能性だってある。
全てを憎悪で焼き尽くして灰にして、彼女が戻る場所がなくなったら意味がないのだ。
そんなこと、自分が絶対にさせない。
彼は、彼女には幸せになって欲しいと、心から願っていた。
「そこで、だ」
突然、彼がぽんと手を叩いた。彼女は驚いて目を丸くする。
「俺は君の復讐を手伝うことにした!」
ニカッと、彼は歯を見せて笑った。