ゴーストと呼ばれた地味な令嬢は逆行して悪女となって派手に返り咲く〜クロエは振り子を二度揺らす〜

56 彼の正体を知ってしまいました!

「俺は君の復讐を手伝うことにした!」

「えぇっ!?」

 クロエは素っ頓狂な声を上げる。またもや予想外の言葉に、二の句が継げなかった。

「――と言っても、君がへまをやらかさないように、補佐役のようなものだと思ってくれ。君は意外と抜けているところがあるからな」

「ぬっ……抜けてなんていないわ!」彼女はむっと口を尖らす。「それに、手伝いなんて不要よ。私は一人でやるつもり。あなたには迷惑をかけられない」

「別に迷惑じゃないよ。俺はただの見物人みたいなものさ」

「見物人ですって?」

 クロエは怪訝そうな目でユリウスを見る。
 彼は愉快そうにニヤニヤと笑っていて、なにを企んでいるのかしらと気味が悪かった。

 彼女は威嚇するようにきっと彼を睨んで、

「あのねぇ、遊びじゃないのよ。楽しい芝居が見たいのなら、あちらの歌劇場にでも行ってちょうだい」

「遊びじゃないよ。俺は過去の自分に後悔しているんだ。だから今回こそは、行動を起こさないで後で嘆くような真似は絶対にしたくないんだ」

 彼は逆行前の己の行動を酷く後悔していた。あの時こうしていれば……と、何度も夢にまで出て来るくらいだった。
 悪夢は、もう見ない。今度こそ失敗しない。行動しないで後悔するなんて、愚の骨頂だ。
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