ゴーストと呼ばれた地味な令嬢は逆行して悪女となって派手に返り咲く〜クロエは振り子を二度揺らす〜

 スコットが婚約者に会いにパリステラ家までやって来ると、クロエは敢えてゆっくりと準備を進める。
 そして彼が待っている間に、おめかしをしたコートニーが応接室に入って来て「婚約者様に失礼なお異母姉様がいらっしゃるまで、あたしがスコット様の相手をしますわ」などと、二人だけのお茶会を始めていたのだ。

 更に、継母の指示でスコットの行動パターンを秘密裏に調査をして、彼の前に「偶然」居合わせるという技を繰り広げていた。そのあとは婚約者の顔をして、ぴったりと未来の義兄にくっついて回る。

 スコットは最初のほうは驚き、クロエに面目が立たないと気が引けていた。
 しかし、慣れというものは恐ろしいもので、幾多とコートニーと「偶然」に出会ううちに少しずつ打ち解けていって、今では気さくに会話するような仲になった。
 と言っても、彼としては義妹に対して恋愛感情なんてこれっぽっちも持ち合わせていなくて、本当の血の繋がった可愛い妹のように思っていた。

 そしてクロエも、彼に「愛情に飢えた可哀想な異母妹」の話をよくしていて、「本当の兄のように甘えさせて欲しい」と、いつもお願いしていたのだ。彼も婚約者の優しい心に胸を打たれて、コートニーのことを邪険にはしなかった。
 そんな義兄と義妹の様子は、事情を知らない貴族たちが見たら、疑問に思う関係かもしれないが……。
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