ゴーストと呼ばれた地味な令嬢は逆行して悪女となって派手に返り咲く〜クロエは振り子を二度揺らす〜
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コートニーが屋敷に来て約一ヶ月半、ついに本格的に侯爵令嬢としての教育が始まっていた。
母娘は結婚前からもパリステラ侯爵から貴族並みの立派な屋敷と召使いを与えられていたものの、貴族夫人及び貴族令嬢としての品位は求められていていなかった。侯爵が二人の天真爛漫な平民としての姿を好んでいたからだ。
彼は窮屈な貴族生活に鬱屈していて、愛人とその娘には癒やしを求めていた。
だから二人の前では礼節やしきたりなどの枷を打ち捨てて、普通の平民の家庭のような姿でいたかったのだ。
だが、侯爵家に入るとなると、そうはいかない。
侯爵夫人も侯爵令嬢もそれなりの品位が求められる。高位貴族は完全に社交から距離を置くことは不可避だからだ。
だからロバートは、渋々だが母娘共に貴族のマナーを学んでもらうことにしたのだった。
元来見栄っ張りで貴族の真似事が大好きだった母クリスは、高位貴族にはまだ程遠かったが、なんとか男爵夫人くらいには見えるようになった。
既に社交界では彼女が元平民の愛人だと知れ渡っているので、夜会で大きな粗相をしない限りは周囲は目こぼししてくれるだろう。
しかし、娘コートニーはてんで駄目だった。
彼女は元より勉強や努力が大嫌いで、それに父親が負い目からか甘やかしていてので、少しの我慢もできない性格だった。だから家庭教師がいくら懸命に教えても、一向に身に付かなかった。
このままでは社交へ出せる状態ではない。
だが、パリステラ侯爵は「娘が嫌がることを無理強いさせることはない」と言っているので、家庭教師はとりあえず最低限の挨拶とフォークの使い方だけは覚えてもらうことにしたのだった。