ゴーストと呼ばれた地味な令嬢は逆行して悪女となって派手に返り咲く〜クロエは振り子を二度揺らす〜
「きょ」慌てた様子でスコットが言い繕う。「今日は君が前に話していた焼き菓子の店に行ってみたんだ。そうしたら、偶然にもコートニー嬢も来ていたから」
「そう言えば晩餐のときに話題に上がっていたものね。コートニーも、あのお店が気になっていたわね」
「そうそう」と、スコットは深く頷く。
「あたしはぁ~、出かけるとよくスコット様とばったり会っちゃうんですぅ~。これって、お異母姉様よりご縁があるのかもぉ~?」
「そうかもしれないわね」
「そ、そんなことないよ。僕はクロエと――」
「あら、これから家族になるのに縁があるのは良いことだわ」
「まぁ、それはそうだけど……」
「それでっ!」にわかにコートニーが目を輝かす。「そちらの殿方はお異母姉様の恋人ですぁっ!?」
「恋人だって!?」と、スコットは目を白黒させる。
「えぇ~? だって、仲睦まじげに歩いてたじゃないですかぁ~。お異母姉様ったら、罪な女ですね!」
異母姉を貶めるように茶化しつつも、コートニーはユリウスの観察を始めた。
背が高くて遠くからでも目立つ容姿。絹のような銀糸の髪に、はっとするくらいの整った顔。
上等な上着は皺一つ付いていなかった。落ち着いていて品があって、かなりの高位貴族だと一目で分かる。
とっても、素敵な…………、