ゴーストと呼ばれた地味な令嬢は逆行して悪女となって派手に返り咲く〜クロエは振り子を二度揺らす〜
それ以来、スコットの悋気は燃え上がって、クロエはジェンナー家の「護衛」という名の監視を付けられてしまった。
彼女は渋々それを受け入れる。これから婚約者をどん底へ突き落とすためには、今は我慢するしかなかった。
ユリウスとは、時間を止めて会話をすることにした。
持ち時間は彼女が5分、彼も5分だ。僅かな時間の、秘密の関係。お喋りは楽しかったが、毎回酷く名残惜しく感じて、ちょっと寂しくなった。
コートニーとクリスは、クロエと男爵令息の仲を煽り立てるようなことをスコットに囁いて、二人を不仲にさせようと試みたが、逆に彼の婚約者への気持ちが盛り上がってしまったようで、逆効果だった。
それでも、コートニーは異母姉の婚約者に纏わり付き、彼も少しでもスミス男爵令息の情報が欲しかったので、それを受け入れた。
その様子は、傍から見たら、節度を持って接しているクロエとユリウスとは対照的に思えた。
そして時間は積み重なり、水の底に潜んでいたクロエはついに動き出す。
それは、ある日、突如としてコートニーが魔法を使えるようになったことが始まりだった。