ゴーストと呼ばれた地味な令嬢は逆行して悪女となって派手に返り咲く〜クロエは振り子を二度揺らす〜
◆◆◆
「まぁっ! ついにコートニーも魔法が使えるようになったのね! 良かったわね、おめでとう」
翌朝、朝食の席でクロエはまるで自分のことのように喜んで、祝福の言葉を贈った。
コートニーはふふんと勝ち誇ったように笑いながら、
「ま、あたしの実力なら当然だわ! 先生がこれまでにないくらいのすっごく強い魔力だって言っていたの。お異母姉様なんかすぐに追い越しちゃうかもね」
「そうね。コートニーならきっと国一番の魔導士になれるわ」とクリス。
「あぁ、そうだな。お前たち姉妹なら魔導騎士団が束になっても敵わないだろう」と、朝から上機嫌なロバート。
「私もコートニーに追い抜かされないように、これまで以上に頑張らなくちゃいけないわね」
「その意気だ、クロエ。二人とも期待しているぞ」
「ま、せいぜいコートニーに置いていかれないように努力しなさいね。パリステラ家の恥にならないように」
「精進しますわ、お継母様」
そのあとも、コートニーの明るい未来の話が続く。
クロエは、家族の夢物語のような薄ら寒い会話劇を冷めた目で見ていた。
(本当に、良かったわね。つかの間の幸せを噛み締めなさい。もう、こんな明るい日常は二度と来ることはないのだから……)