ゴーストと呼ばれた地味な令嬢は逆行して悪女となって派手に返り咲く〜クロエは振り子を二度揺らす〜
ご機嫌なロバートの陰で、クリスとコートニーは無言で目を合わせて、にやりと歪んだ笑みを漏らした。
――これは、クロエを潰す絶好のチャンス!
クロエは聖女として名高いが、それは回復魔法が専門で、戦いに参加したことは一度たりともなかった。
それに対して、コートニーは石像をもいとも簡単に粉砕できる、超強力な魔法。どちらが大会で有利だなんて一目瞭然だ。
この国王主催の魔法大会で、いつもツンと澄ましている生意気なクロエのプライドをへし折る。そして惨めな様子を貴族たちに見せ付けて、社交界での地位も引きずり下ろして、コートニーが取って代わってやる。
(……なんてことを考えているのでしょう。せいぜい今のうちに逞しい妄想をしていればいいわ)
クロエは涼しげな顔で紅茶を飲む。
静かな食卓は、興奮を無理に抑えたじわじわする熱気に包まれていた。
それから、コートニーは珍しく魔法の練習を頑張った。これまで異母姉から馬鹿にされてきた分、こっ酷く仕返しをしようという魂胆である。
母クリスも、大会でなんとしてでもクロエを叩き伏せて、愛娘を優勝させようと画策していた。
一方クロエは、表面上は平常運転を心がけつつも、水面下でユリウスに使い走りをさせて大会に備えた。
スコットは、クロエに優勝して欲しいけど、聖女なのに野蛮な戦いなんて大丈夫なのかと気を揉んでいた。
そして、二度目の魔法大会が始まる。