ゴーストと呼ばれた地味な令嬢は逆行して悪女となって派手に返り咲く〜クロエは振り子を二度揺らす〜


 ――――、



「なんだ、その暗黒騎士みたいな衣装は」ユリウスは苦笑いをする。「魔王になって国を滅ぼすつもりか」

 時間を静止させた彼は、呆れたように息を吐いた。

 今日のクロエの衣装は、黒を基調にした騎士服で、銀の刺繍の装飾がところどころキラキラと輝いている。
 アクセントに青色を取り入れていて、動く度にマントの裏側の深いタンザナイトの色が波打って、とても目立つ装いだった。

「これは葬送の服よ」

 クロエはぶっきらぼうに答える。
 母の弔い、罪人たちの地獄への葬送。そして、誰よりも輝いて、会場の中心にいる自分。
 ……そんな自己中心的な衣装だったのだ。

 ユリウスは肩をすくめて、

「その姿も凛々しくて素敵だけど、君は暗闇よりも太陽の下のほうが似合っているよ」

「っ……!」

 クロエの頬が赤く染まる。急激に羞恥心が襲った。

(なんで、そんなことを言うのよ……!)

 頭の中のごちゃごちゃを振り払おうと、かぶりを振る。余計なことを考えては駄目だ。
 家族と婚約者に報復を決意した黒い感情で、お日様の下でへらへらと笑って生きるなんて、なんておこがましいのだろう。
 今ばかりは、いつも欲しい言葉をくれる彼が恨めしかった。
< 331 / 447 >

この作品をシェア

pagetop