ゴーストと呼ばれた地味な令嬢は逆行して悪女となって派手に返り咲く〜クロエは振り子を二度揺らす〜
彼女の複雑な心中なんてお構いなしに、彼は呑気に話を続ける。
「帝国へ行ったらまずはドレスだな。真面目な君のことだから、どうせクローゼットの中身も刷新したのだろう? ――よし、俺がクロエに似合うデザインを見繕ってやろう。やはり君の瞳の色に合わせたグリーン系が似合うな」
「かっ、勝手に決めないで!」
「え? 俺の瞳の色のほうがいいって?」
「ばっ――」
クロエは顔を真っ赤にしてしばし固まってから、
「と、ところで、お願いしたことは、で、できているの!?」
話を逸らそうと、捲し立てるように言った。
ユリウスはニヤリと怪しいな笑みを浮かべて、
「もちろん。準備万端ですよ、クロエ様」
「ありがとう。では、打ち合わせ通りにお願いね」
「御意」
「……もう魔法を解いてもいいわ」
ユリウスは目を丸くして、
「なんで? まだ時間はあるからもう少し話そうじゃないか」
「これから試合があるの。遊んでいる場合じゃないのよ」
「リラックスしたほうがいいだろう?」
「駄目よ。試合に備えて精神を集中させなきゃ」
「えぇ~。こういうときは身体の力を抜いたほうがいいんだよ。もっと笑って」