ゴーストと呼ばれた地味な令嬢は逆行して悪女となって派手に返り咲く〜クロエは振り子を二度揺らす〜
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クロエはもがく。
酸欠で意識が朦朧としてきた。さっきから思うように身体が動かない。全身が痺れるような鈍い感覚が襲ってきた。
鉛の塊になったみたいに、ゆっくりと沈んでいく。
(もう駄目……)
瞳が、閉じていく。
そのとき、
ガクンッ――と、突如肉体が静止した。
(ユリ、ウス…………?)
クロエは、銀色の髪がゆらゆらと揺れいているのを、おぼろげな目で見たのだった。