ゴーストと呼ばれた地味な令嬢は逆行して悪女となって派手に返り咲く〜クロエは振り子を二度揺らす〜
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(身体が動かない……!)
痺れは更に強くなって、クロエの肉体を蝕んだ。
この胸の奥から突き上げる苦痛は、毒を盛られたのだと、すぐに気付いた。
今思えば、レイン伯爵令息との試合時に覚えた違和感は毒が効き始めた合図だったのだ。あのとき、即座に違和感に対応していれば……と、歯痒かった。
「クロエっ!」
頭上からユリウスの声が聞こえた。目線だけで彼を追う。
彼はすぐにでも魔法で時を止めそうな勢いだったので、「ノー」と、重い頭を微かに振った。彼は一応は理解してくれたようで、不安げな表情で頷いてくれた。
この試合だけは、意地でもユリウスに頼りたくなかった。自分の、ちっぽけなプライドだ。
コートニーには、彼の手を借りないで己の力だけで勝ちたい。そうしないと、前へ進めない気がする。
純粋な魔力勝負。魔導士として、絶対に負けたくない。
ここで勝たなければ、仮に復讐を成功させても、胸の中にずっとモヤモヤが残る気がするから。