ゴーストと呼ばれた地味な令嬢は逆行して悪女となって派手に返り咲く〜クロエは振り子を二度揺らす〜

 魔石とは、凝縮した膨大な魔力が詰まっている宝石だ。何十年、何百年と時間をかけて大地の魔力を蓄積した天然の宝石が魔石へと変化する。
 その効果は、魔導士が己の持つ力量を遥かに凌ぐほどに、強い魔法を発動できるようになるのだ。

 魔石はとても貴重なもので、その効果から国が厳重に管理をしていた。人工的に魔力を注入した魔石は市場に多く出回っているが、天然のものは希少でとても高価だった。

 そんな珍しい魔石が、コートニーの懐からごろごろと出てきたのだ。会場内はざわついて、普段は感情を面に出さない高位貴族や王族までにも動揺が走った。

 ロバートは顔面蒼白で凍り付き、クリスは理解不能といったように唖然としていた。
 二人の近くでは、国王が渋面を作って下の様子を見つめていた。途端に、冷え込んだ空気が周囲に伝播する。

< 357 / 447 >

この作品をシェア

pagetop