ゴーストと呼ばれた地味な令嬢は逆行して悪女となって派手に返り咲く〜クロエは振り子を二度揺らす〜
「は……? なに言ってるの……?」
満身創痍のコートニーは、顔だけをクロエに向けて小さく言った。異母姉がなにを言っているのか全然分からなかった。
(魔石? 一体、なんのこと? っていうか、自分の周りにあるこの宝石はなに?)
「お……おかしいと思っていたの……」クロエは震えながら涙目で異母妹を見る。「ずっと魔法が使えなかったあなたが、まるで魔法大会に合わせたかのように、突然強い力に目覚めるなんて……」
「はぁっ!?」
コートニーは抗議しようとするが、疲弊した肉体は言うことを聞かず、重力に押し潰されるかのように、地べたから恨みがましく異母姉を見上げるだけだった。
クロエはそんな異母妹のことなどお構いなしに酷く悲しげな様相で、
「まさか、こんな不正をしていただなんて……! 国王陛下の御前で……なんてことをっ!!」
彼女の一言に会場内は騒然となった。不穏な囁き声がそこかしこから溢れ出す。
今日の魔法大会は国王主催なのだ。仮に不正を行ったとしたら、我が国の最高位である国王陛下を侮辱することになる。
そうなると――…………、
そのとき、険しい顔をした騎士たちが、試合場に勢いよく駆けて来た。
そして、
「なっ、なにするの!?」
すぐさまコートニーを拘束して、魔道具を用いて散らばっている魔石の調査を始めた。張り詰めた緊張感が場内を支配して、水を打ったように静かになった。
つつと涙を流すクロエと呆然とするコートニー。血の気の引いたロバートは今にも倒れそうで、クリスは顔を真っ赤にして継子を睨み付けていた。