ゴーストと呼ばれた地味な令嬢は逆行して悪女となって派手に返り咲く〜クロエは振り子を二度揺らす〜
コートニーは初めての授業で魔法を放った。
魔法の訓練は、自身の体内に内包されている魔力と向き合うことから始める。まずは身体を巡っている魔力を感じて、それを自在に操作することを学ぶのだ。
しかし、コートニーは出だしから魔力を凝縮して、魔法の弾を放つという技をやってのけたのだ。しかも、威力も抜群だ。
「天才…………!」
側に立っていた魔法の教師が目を剥いて呟く。彼の感動のあまり、全身が打ち震えていた。
これまで彼が教えた貴族の子女で、初めての授業で実戦でも通用しそうな魔法を発動させた者はいなかったのだ。
彼女は稀代の才能を持っている。初代国王に匹敵する力を秘めているのかもしれない。
もしかすると、伝説の聖女なのかも…………。
辺りにはコートニーの魔力の残滓がまだ浮遊している。
魔法が使えないクロエにもこの圧倒的な力を感じて、ビリビリと肌が震えていた。
ねちっこい嫌な汗が彼女の額を伝った。
コートニーは紛うかたなき天才だった。