ゴーストと呼ばれた地味な令嬢は逆行して悪女となって派手に返り咲く〜クロエは振り子を二度揺らす〜


◆◆◆




「なんでっ、なんで魔法が使えないのようっ!!」

 コートニーは騎士の制止を振り切って何度も魔法を放った。
 何度も何度も何度も……、
 しかし、ついに彼女が魔法を発動する瞬間は訪れなかった。

(なんでっ……なんでよっ……なんで……なんっ……)

 コートニーの瞳からぽろぽろと涙が零れ落ちた。
 歯痒くて、苛立たしくて、悔しくて悔しくて悔しくて、腹が立って、悲しくて……ぐちゃぐちゃの感情が彼女の胸を掻き乱した。

 さっきまで自由自在に魔法を発動できたのに、今では体内の魔力も枯渇したような空っぽな感覚だ。訳が分からない。

 あたしは、たしかに魔法が使えて、それどころか、他の魔導士を凌駕する天才的な才能を持っているのに……それこそ、あの女さえも敵わないような…………。


「お前っ、魔法が使えないから魔石の力で誤魔化していたな!」

 一人の騎士が、眉を吊り上げて叫ぶ。とんでもない発言に、またぞろ会場内に衝撃が走った。

「魔法が使えないのに魔法大会に出場したですって!?」

「だからあの魔石の量なのか」

「これは……前代未聞だぞっ!」

「王に対する不敬罪だ! 即刻処刑すべきだ!」

「ジェンナー公爵家もパリステラ家もお家取り潰しかもしれないわね……」

「まさか、両家で謀反を計画して!?」

 貴族たちに激しい動揺が走って、波打つように騒然となった。
 困惑の声はやがて非難の声に変化して、中心にいるジェンナー、パリステラ両家に襲いかかって来る。

 スコットは顔面蒼白でその場に凍り付いて、コートニーは今も魔法を使って異母姉を殺そうと、ぶつぶつと詠唱を繰り返す。
< 365 / 447 >

この作品をシェア

pagetop