ゴーストと呼ばれた地味な令嬢は逆行して悪女となって派手に返り咲く〜クロエは振り子を二度揺らす〜
69 婚約者が全てを知ってしまいました!
王宮にある地下牢は、昼も夜もひっそりと静まり返っていた。
時おり聞こえる水漏れの音、びゅんと走り抜ける薄汚れたズミ、そして底冷えする寒さは、生まれ持っての高位貴族であるスコット・ジェンナー公爵令息の精神を、じわじわと削っていく。
あれから、どれくらいの時間がたったのだろうか。
陰鬱を凝縮したような閉鎖的な空間で、彼はずっと物思いにふけっていた。
どうして、こんなことになってしまったのだろうか。
確実なことは、自分は無実だということだ。
コートニー嬢とは囁かれている不名誉な関係ではないし、国王陛下の御前で不正を行うことも断じてやっていない。己の家門を傷付けるような自殺行為をするわけがない。
だから、自分は嵌められたのだ。
でも……誰から?
それを考えれば考えるほど、袋小路に入って行くようで……考えるのが恐ろしくなった。
結論はいつも同じだ。
ずっと、違和感を覚えていた。だけど、見て見ぬ振りをしていたのだ。
あんなに優しかった婚約者だったのに、聖女の力に目覚めてから、どことなく変わってしまったのは分かっていた。彼女の気持ちが違う場所へ行ってしまったことも、知っていたのだ。
でも、二人は、表面上は変わっていない。相変わらず、政略結婚だけど仲の良い令息と令嬢のままだ。
それでも構わないと思っていた。彼女が手に入るのなら、それでもいい。
だけど……クロエ自ら、こんなことをするなんて――……。
時おり聞こえる水漏れの音、びゅんと走り抜ける薄汚れたズミ、そして底冷えする寒さは、生まれ持っての高位貴族であるスコット・ジェンナー公爵令息の精神を、じわじわと削っていく。
あれから、どれくらいの時間がたったのだろうか。
陰鬱を凝縮したような閉鎖的な空間で、彼はずっと物思いにふけっていた。
どうして、こんなことになってしまったのだろうか。
確実なことは、自分は無実だということだ。
コートニー嬢とは囁かれている不名誉な関係ではないし、国王陛下の御前で不正を行うことも断じてやっていない。己の家門を傷付けるような自殺行為をするわけがない。
だから、自分は嵌められたのだ。
でも……誰から?
それを考えれば考えるほど、袋小路に入って行くようで……考えるのが恐ろしくなった。
結論はいつも同じだ。
ずっと、違和感を覚えていた。だけど、見て見ぬ振りをしていたのだ。
あんなに優しかった婚約者だったのに、聖女の力に目覚めてから、どことなく変わってしまったのは分かっていた。彼女の気持ちが違う場所へ行ってしまったことも、知っていたのだ。
でも、二人は、表面上は変わっていない。相変わらず、政略結婚だけど仲の良い令息と令嬢のままだ。
それでも構わないと思っていた。彼女が手に入るのなら、それでもいい。
だけど……クロエ自ら、こんなことをするなんて――……。