ゴーストと呼ばれた地味な令嬢は逆行して悪女となって派手に返り咲く〜クロエは振り子を二度揺らす〜
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「凄いじゃないか! コートニー!!」
パリステラ侯爵は色めき立った。喜色満面で娘を強く抱き締める。
「お父様、痛いっ!」
コートニーはむっと口を尖らすものの、大好きな父に褒められて嬉しかった。
ロバートは歓喜していた。
魔力の高かった元妻の娘は全く魔法が使えずにいて、このままでは侯爵家の矜持に関わると酷く危惧していたのだ。
彼にとってはマナーや教養より魔力のほうが重要だった。この国の建国の歴史を鑑みれば、一番重要なのは下らない貴族のしきたりより魔力だった。
正直を言うと……彼はクロエには失望していた。
娘に魔力がなくて、なんのための政略結婚だったのだろうか。パリステラ家のさらなる繁栄のために好きでもない女と婚姻を結んだのに、あの体たらく……。
もし、クロエに強い魔力があったのなら、彼ももっと元妻に心を寄せたのかもしれない。浮気もしなかったかもしれないし、家族を大事にしていたのかもしれない。
だが、現実は非情だ。
娘は魔法が使えない。高位貴族でそんなこと、許されるはずがない。
彼はそんな娘が煩わしかったし……恥だった。