ゴーストと呼ばれた地味な令嬢は逆行して悪女となって派手に返り咲く〜クロエは振り子を二度揺らす〜
――という、真っ赤な嘘を、さも事実のようにスコットは告白した。
大会当日の状況と照らし合わせると整合性が取れたので、当局は彼の自供を公式に認めて、判決が下された。
ジェンナー家の屋敷の捜査の結果、今回の事件は嫡男スコットの完全な単独犯と断定。公爵と公爵夫人の無実が証明された。
公爵家は建国時からの王家の忠臣で、これまでの国への貢献や功績は計り知れない。
なので、処刑は免除され、侯爵位への降格のみの処分となった。
同じく、パリステラ家も捜査の結果、次女コートニーの当日の行い以外は特に問題もなかった。クリスは闇魔法の痕跡を上手いこと消していたようだ。
当然、クロエも潔白が証明されて、魔法大会の優勝者となる予定だったが、彼女は異母妹の不始末を理由に辞退。今大会は、優勝者なしの非常に後味の悪い結果になってしまった。
コートニーは、まだ判断力のない未成年が公爵令息に言われるまま不正を行ったとして、処刑は免れた。
しかし、反省を促すために半年間の自宅軟禁、外部との接触禁止となった。
更に、コートニーのみ今後は王族と関わることを禁止され、王族に関わる施設や行事も出入り禁止になった。
よって、デビュタントの国王への挨拶は果たせなくなり、そうなると社交界ではもう生きていけない。
だから事実上、彼女は貴族として抹殺されたも同然となってしまった。
これには母クリスが大激怒して抗議をしたが、「処刑されないだけ良かったと思え」とロバートが一蹴した。彼は処刑はもちろん、爵位の降格もないことにひたすら感謝した。
そして、出来損ないのうえ、更に王家に対して背信行為を行った恥知らずの娘の処理をどうするか、頭を悩ませていた。
コートニーは最初から最後まで無実を訴えていた。これは異母姉クロエに仕組まれたものだと。
しかし、どんなに彼女が声高に主張しても、証拠もないし、逆にスコットの供述のほうが辻褄が合うので、誰も取り合ってくれなかったのだ。
彼女は自室から一歩も出られず、そのストレスを発散するかのように、毎日大声で怒鳴ったり物に当たったりして、使用人たちの悩みの種になっていた。
そんな娘に対して、父親と母親の意見は衝突し、パリステラ家の空気は日に日に悪くなっていった。