ゴーストと呼ばれた地味な令嬢は逆行して悪女となって派手に返り咲く〜クロエは振り子を二度揺らす〜
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「コートニーを修道院へ送ることにした」
当主であるロバートの発言に、クリスは卒倒して、すぐさま気付け薬で目を覚ますと、今度は猛獣のように牙を剥いて抗議をはじめた。
「なぜですっ! なぜ、コートニーだけがこんな不幸な目に合わないといけないのですっ!!」
彼女の金属音みたいな金切り声が屋敷中に響く。
ロバートは耳を塞いでうんざりとした様子で、
「こうするしか方法はないのだ。コートニーはあんな不始末をおかして、社交界では居場所がなくなった。デビュタントの挨拶もできないとなると、貴族生命も絶たれた。そうなると、もう嫁の貰い手も見つからないだろう」
「あの子が一体なにをやったと言うのですっ! 酷すぎますっ!」
「酷いのはコートニーのほうだろう!? 全く、家門に泥を塗りおって……。おまけにジェンナー家との繋がりもなくなってしまった。それに王家からの信頼も失ったではないか! あの出来損ないのせいで、パリステラ家の立場は地に落ちたのだぞ!?」
「なんですって……! それもこれも、全部クロエのせいじゃありませんか! あの娘が可愛いコートニーを追い詰めたんですっ!」
「クロエがなにをしたというのだっ!? あの子はただ聖女として務めを果たしているだけだ。魔法が使えないのに魔石であたかも実力者のように見せたり、それに姉の婚約者を奪ったのも、全部コートニーの仕業だろうがっ!!」