ゴーストと呼ばれた地味な令嬢は逆行して悪女となって派手に返り咲く〜クロエは振り子を二度揺らす〜
「大丈夫よ……大丈夫、コートニー」
クリスは娘の背中を優しくさする。
大丈夫。自分たちが負けるはずがない。こんな結末なんて許されない。
あの女は、娘の言う通りなにか汚い真似をしているはずだ。
しかし、証拠がない。これから作ることも困難だ。
……ならば、そんなことはどうでも良いくらいの醜態を晒させればいい。
それこそ、コートニーの醜聞を超えるくらいの――……。
「あの女は、絶対に潰すわ……」
クリスの瞳がぎらりと怪しくきらめいた。
ロバートはクリスの訴えは全く相手にせずに、粛々とコートニーの修道院への移動の準備が進められた。妻との関係もすっかり冷え込んで、二人は顔も合わせなくなっていた。
彼の愛する家族は、今ではもうクロエだけだ。
コートニーの一件が片付いたら、妻とも離婚しようと考えていた。
やはり、己にはクロエと亡き前妻だけが家族だったのだ。
このような素晴らしい魔力を持つ娘を生んでくれた妻に、彼は改めて感謝をした。こんなことなら、冷遇しないでもう一人くらい子を作っておけば良かった……と、少し後悔もした。
夫が妻を放置してるものだからか、クリスは以前より動きやすくなっていた。彼女は、今日も闇魔法の集会に足を運ぶ。
母娘は、とてつもなく追い詰められていたのだ。