ゴーストと呼ばれた地味な令嬢は逆行して悪女となって派手に返り咲く〜クロエは振り子を二度揺らす〜
元妻は「クロエはまだ力に目覚めていないだけで、いずれ私たちを凌ぐ能力を持つ」と主張していたが、そんな兆候は全く現れなかった。
個人差はあれど、貴族は10歳も満たないうちに、魔力を発動させる。
クロエは待てど暮らせど、能力に目覚める日はついぞ来なかったのだ。
元妻は娘可愛さに嘘をついていたのだろう。
そして、侯爵夫人という地位を手放したくないばかりに、希望のない娘の未来に縋っていたのだろう。……そんなところも憎いと感じた。
自分は騙されたのだ。
嘘つき女と、魔法の使えない娘。なんて不幸な人生なのだろう。
そんな思いで、ロバートは自然と家庭から遠のいて、愛人と娘――いつの間にかそちらが彼の生活の主軸になっていった。
コートニーの体内に巨大な魔力が内包されていることは彼も薄々気付いていた。この子は出来損ないのクロエと違って素晴らしい魔導士になると確信していた。
それが……自分の期待以上のこのような力を発揮するなんて…………!
パリステラ侯爵は、長年の鬱屈した劣等感という暗い霧の中に、一筋の光が差し込んだ気がした。