ゴーストと呼ばれた地味な令嬢は逆行して悪女となって派手に返り咲く〜クロエは振り子を二度揺らす〜

75 いよいよ終幕です!

「クロエ……処刑が終わったら、俺と一緒にキンバリーへ行かないか?」

「っ…………」

 ユリウスの二度目の求婚に、クロエはまたもや答えられなかった。








 パリステラ家の度重なる醜聞は、瞬く間に社交界へと広まった。

 侯爵夫人と侯爵令嬢が、母娘揃って禁忌である闇魔法の幻覚剤を使用して、複数の男たちと交わっていた……という前代未聞の大スキャンダルである。それも、聖女がパーティーを開いている、その隣で。

 母娘の起死回生の策は、そのまましっぺ返しとなって、二人の醜い噂として実しやかに囁かれていたのだった。
 
 この耳を疑うようなあまりに酷い話は、王都を震撼させた。

 ただでさえ、つい先日に魔法大会での不正と姉の婚約者の略奪で酷い悪評をこうむったコートニー・パリステラの新たな所業。しかも母も一緒になって薬で男たちとの火遊びだなんて。

 これには、ロバートの怒りはとてつもないものだった。

 あの二人のせいで、建国時から続いている名門中の名門・パリステラ家の権威は、もう底の底まで失墜していた。
 これまで、ずっと王家に近い場所に立つ高位貴族の座を維持してきたのに、今では爵位こそ侯爵だが、下級貴族の如く軽んじられるようになってしまった。

 ロバートは、夜会でも議会でも肩身が狭くなって、王宮でひっそりと降り注ぐ嘲笑は、プライドの高い彼にはとても耐え難いものだった。
 彼は外でのストレスを屋敷に持ち込んで、手当り次第に物を破壊し、そして酒に溺れるようになったのだった。
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